簡単!増し目編み(その1)

トップダウン編みは、「立体編み」、「シームレス編み」、「フィニッシュフリー編み」、「増し目編み」とも言うことができます。でも一番いい呼び方は「簡単編み」だと思います。

トップダウン編みには制約などなくてたいていのセーター類は編めるんですよということを証明するためにこのブログで色々と紹介してきましたが、かえって難しく思われたかもしれません。それは、トップダウン編みが難しいのではなく、文章で説明するのが難しいのです。
と言うことで「簡単」と言うことを実感できる作品の編み方をわかり易く説明したいと思います。そう思ったきっかけは、下の写真の毛糸を見つけたからです。ユザワヤのワールドフェスタのヘアリープードル、綿52%アクリル36%ポリエステル12%で1玉40g60mです。12-14号針で標準ゲージが12目18段/10cmです。

芯になる糸は細いのですがカールした毛がついているので、太い針でゆるゆるに編むようです。そのため、編み地が見えずメリヤス編みでかまわないので簡単、一目が大きくて目数が少なくなるので簡単、メリヤス編みでも縁が反り返らず編みっぱなしができて簡単、と思われます。

この毛糸をトップダウンの分類の中で一番簡単なCで編みます。うしろ襟ぐりを作り目にして編み始めるやり方です。コットン素材なので春用のカーディガンにします。キッチリ着るというよりは羽織る感じのものにします。
まずは、幅を決めます。下図のように、バスト92cmとややゆるめになるようにして、襟ぐり幅を22cmと大きめにとり、肩線を6cmと長くならないようにとります。すると残りは6cmとなります。うしろ襟ぐりの深さは取れないので前襟ぐり深さは大きめに10cmとします。袖ぐり深さは女性用の標準で20cm、脇の下での袖周も女性用の標準で30cmとします。これで寸法が決まりました。
次に標準ゲージで寸法を目数と段数に変えます。そして増し目の入れ方を決めます。まず袖は、36段で36目ですから前後の片側で2段に1目(図中1/2)とします。身頃の袖ぐりは、36段で6目増ですから6段に1目(図中1/6)とします。次に前襟ぐりのカーブです。これはお好きなようにですが、ここでは 割と四角っぽくなるように、18段の内、10段編んだら2段に1目を4段、各段に1目を4段とします。トップダウン編みのセットインスリーブでの基本である肩線は、各段肩線の目の両側に1目づつの増し目を入れます。
 
標準ゲージが自分のゲージとあっていないと寸法が狂いますが、大きな差がなければ、チョット大きめか小さめになるぐらいで済みます。さらに言うと、寸法の誤差が大きくなるのは目数や段数が大きくなってからなので、襟ぐりや肩幅は余り気にすることはありません。私はいつも脇の下に近づいたら実寸を測って、脇の下の位置を設計に合わせるようにその後の増し目の入れ方を調整しています。
 
脇の下の位置を設計に合わせるとはどういうことかというと、胴周と袖ぐり深さと袖周を設計値に合わせるということです。胴周はデザインの基本ですし、袖ぐりと袖周が小さかったら腕がきつくなってしまいます。逆にこれささえしっかり守れば、なんとか着れるものが作れるということです。ここで修正できるというのがトップダウン編みの最大の利点です。
ここまで決めたら、どの段でどこの増し目を入れるか整理しておきます。私は下図のように脇の下までの43段を数字に書いて、各段の増し目の種類をマークします。図中のR(right)は表面編み、W(wrong)は裏面編みを表しています。1段編んだら斜線でマークして消していきます。
編んでいる最中の増し目の位置は下図のようになります。例えば20段目は上のメモに◻︎と△のマークが付いているので、身頃の袖ぐりと袖で増し目を入れると言うことです。
では作り目をして編み始めましょう。針は12号にします。作り目は下図のように、うしろ襟ぐりの26目に肩線の目が2目と前身頃の端の目が2目で合計30目です。下図で端から2目目を肩線の目とします。

また増し目は一番簡単なかけ目にします。糸にカールが付いているので普通の増し目は編みにくいからです。増し目の位置は、肩は肩線の目のすぐとなり、前襟ぐりは端の目のとなり、身頃の袖ぐりは端の目のとなり、袖は一番端の目と決めておきます。

なお、編み目がスカスカそうなので、ボタンホールは空けないことにします。ボタンは一番上の一つだけにしょうと思っています。
20段編んだところです。写真の状態では寸法が予定より小さくなっていますが、脇の下までには調整したいと思います。自分のものを編んでいるなら、この辺りでかぶってみて襟ぐりの大きさや形を確認するといいです。気に入らないならほどして編み直したってまだ1玉ぐらい編んだだけですから大したロスにはなりません。これもトップダウン編みのいいところです。
43段まで編みました。
肩で折り返すとこうなります。
ここで寸法を測りました。脇の下まであと1段残してはいますが、下図のように寸法が足りません。( )内が予定の寸法です。私のゲージは標準よりも1割ぐらい目が小さいようです。胴幅で+8目、袖周で+2目、袖ぐり高さで+3段、必要です。
そこで増し目を入れながらあと3段編むことにします。4段目(通算47段目)で、袖の目を別糸に休めて前後身頃を脇の下での繋ぎます。メモを書き直すと下図のようになります。
身頃の脇の下があと4段でどうなるかを絵に描くと下図のようになります。袖は描いていません。47段目で袖の目を休めたら、2目作り目して前後身頃を繋ぎます。
脇の下でつないでから3段編んだところです。ここまで編んだら出来たも同然です。これもトップダウンのいいところです。2玉ぐらい編んだところで出来上がりのイメージが出来てきて、やる気が持続します。自分のものを編んでいるならかぶって袖を通してみてください。裾をどこまで編むか、ウェストシェイプを入れるか、袖の長さをどうするか、などこの時点から決めることができます。

実は目数を数えたら、左前身頃の方が右前身頃よりも4目も多かったのです。増し目のミスにしては大きな誤差です。毛糸のカールで編み目がよく見えないのでどこで何を間違えたかよくわかりません。今さらどうしようもないので、それがデザインとして、直さずこのまま編み進みます。あとは好きな長さまで胴体を編むだけです。今回は短めに、脇の下から30cmとするつもりです。60段ぐらいです。
コメント: 3
  • #3

    やまねこ (月曜日, 20 2月 2017)

    丁寧なコメントありがとうございます。メンズベスト嬉しいです。次の更新を楽しみに待ちたいと思います。

  • #2

    篠原 (日曜日, 19 2月 2017 17:11)

    やまねこさん
    コメントありがとうございます。挑戦していただいて嬉しいです。何か不明な点があれば何なりとおたずね下さい。
    今、裏編みのカーディガンを編んでいるところなんですが、終わるころにはもう春なので、次はメンズのベストをと思っていたところです。

  • #1

    やまねこ (日曜日, 19 2月 2017 13:41)

    いつも楽しく拝見させていただいています。「毛糸だま」で拝見しでから訪問するようになり、今回の簡単!増し目編みを見て初めてトップダウンの編み方に挑戦してみました。なんと、カーディガンが出来上がりました。はまりそうです。個人的にはゆったり目のサイズが好みなので、次はサイズを調整して編んでみようと思います。それと紳士のベストにも挑戦予定です。
    これからも、ブログの更新を楽しみにしています。